第8回 猫屋台オープン。

    猫屋台の最初のお客さんは、
    ハルノ宵子さんの高校の同級生14人でした。
    同級生のみなさんは「開店祝い」といって、
    差し入れのお酒を
    たくさん持ってきてくれました。

    ハルノさんと同級生のみなさんは
    卒業後40年経っても変わらぬ友情で
    この人数単位で
    月イチのペースで呑んでいる、とのこと。
    (いつもは近所のお店に集まっています)


    ▲14人、居間にギッチリ座っています。

    ▲床の間にお祝いのお酒が並ぶ。
    ハルノさんはいきいきと
    厨房に立っていました。
    この日のメインメニューは白菜鍋でした。


    ▲よっ、店主!

    ▲エプロンがヘンな柄(男性の裸の柄)なのですが、
     それはまぁいいか。

    ▲なぜかダンボールの「食品衛生責任者」。
     掲げる紙はなんでもいいらしいのですが‥‥。
    高校時代からの長いつきあいであっても、
    ハルノさんが「お料理好き」であることは
    それほど知られていなかったそうです。
    同級生のみなさんは
    「こんな人になるなんて思わなかった」
    と、口々に言っていました。


    ▲ハルノさんは、同級生に「タコ」と呼ばれていました。
    (本名が吉本「多子(さわこ)」だから)

    ▲盛り上がって思い出話に花が咲きます。
    同級生のみなさんは、こんなふうに話してくださいました。

    「高校時代は、タコのお料理より、
     おとうちゃんのお弁当のほうが有名でしたよ。
     パセリだらけのお弁当をタコが持ってきたりして
     おっかしかったなぁ。
     あとね、タコが持ってきたお弁当で、
     私たちはプチトマトをはじめて見たんですよ。
     プチトマトって、当時はなかったからね。
     やっぱりめずらしいものを持ってくるなぁ、って。
     それも、おとうさんが入れたんだよね」

    へぇえ。

    「タコん家に遊びに来ると、
     おとうさんが、私たちに
     もろこしを焼いてくれたよ。
     いまここに座ってる、あいつも、こいつもみんな、
     おとうさんのとうもろこしは、食べてるよね」

    「うん、うん」

    ハルノさんのお話だけでなく、
    みなさんは、たのしそうに隆明さんの話をしてくれました。
    それは、猫屋台の食堂スペースに
    吉本隆明さんの仏壇があるからかもしれません。

    やっぱり、吉本家は昔から
    とてもユニークな一家だったんだな‥‥。
    吉本さんは「おもしろおとうちゃん」だったんだ。


    ▲部屋の角に吉本隆明さんの写真。

    ▲ぽんぽんとお酒が抜かれていきます。

    ▲お祝いの「ねこ屋台」ラベルのお酒。
    この日私は、ぐつぐつの白菜鍋や
    〆のリゾットを見るのみ。
    すごく、おいしそうでした。
    そして、日を改めて
    オープンを心待ちにしていた糸井重里といっしょに
    「猫屋台」を訪れることにしました。

    予約を入れるときに、ハルノさんに
    猫屋台の料金体系をうかがうと
    「まぁ、適当に、
     1000円コース、3000円コース、5000円コースかな」
    というざっくりさ。
    5000円のコースをお願いすることにしました。
    そして、糸井の大好物の
    「恐ろしいササミフライ」を出してください、と
    お願いしました。

    「恐ろしいササミフライ」は
    ササミひとつにつき
    バターの立方体のかたまり3個ほどを挟んだ、
    カロリーのもとのようなフライでです。
    バターには刻んだパセリが混ぜこんであって、
    香りがさわやかになるためか、
    予想外にたくさん食べてしまうとのこと。
    (くわしくはハルノ宵子×糸井重里対談
     「父と母と、我が家の食事。」をごらんください)

    改築後もそんなに雰囲気が変わらない
    ひさしぶりの吉本家に足を踏み入れ、
    糸井はまず、吉本さんのお仏壇に
    手を合わせていました。

    そして、ハルノさんに
    「いやぁ、いよいよだ、できたね」
    と声をかけました。

    「糸井さんはお酒を飲まないから、
     代金のもとが取れそうになくて申し訳ないけど」
    と言いつつ、ハルノさんはいくつもの
    おいしいおいしいお料理を出してくれました。


    ▲うにのクリームムース。

    ▲柿と湯葉のクリームチーズあえ。

    ▲タコとカブのあえもの。

    ▲牛たんと里芋の煮つけ。

    ▲牡蠣の葱焼き。

    ▲みんながお料理に舌鼓を打っている頃に‥‥。

    ▲ハルノさんはキッチンで「恐ろしいフライ」を
     仕込んでいました。

    ▲恐ろしいフライ(揚げる前)。

    ▲来ました。恐ろしいです。

    ▲これです。黄金色。

    ▲待ちに待った!

    ▲「おお、うまー!!」

    ▲フライは瞬く間に消失しました。
    ササミの歯ごたえと、
    じゅわっと流れ出る
    パセリ入りバターの暴力的なうまみ、
    さくさくのころも。
    ああ、いま、このとき(原稿を書いている、いま)も
    食べたいです。


    ▲シメは自然薯のとろろごはんでした。

    ▲おいしかったぁ!
    私は料理をいただきながら、ハルノさんが、
    「そのとき手に入る、できる限りいい素材を
     手順どおりにていねいにつくる」
    と以前おっしゃっていたことを
    思い出していました。
    猫屋台は、旬の素材を使うので
    時期によってメニューが異なります。

    たとえば夏は、カツオのたたきや
    冷やしチャーシューが出たり。

    シメはだしのしっかりきいた
    冷たいそうめんだったりします。


    ▲おなかいっぱいでもつるっと入る冷やしそうめん。

    (つづきます。次回は最終回です)
    2014-10-09-THU

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