自分たちのコンテンツが本物であることを視聴者に納得してもらうため、今後は制作の舞台裏を紹介する映像や、寄せられた映像の真偽を確かめる作業の詳細を公開する必要があるだろうとWe Animalsは考えている。また、写真や動画の出どころや編集履歴などの情報を、デジタルファイルに埋め込む技術の導入も検討中だという。同団体のヴィジュアルコンテンツ部門長を務めるヴィクトリア・ドゥ・マルティニーは、何より重要なのは信頼の維持だと語る。さもないと、「すべての作品に疑いの目を向けられることになりかねません。そうした状況は何としても避けたいのです」と彼女は言う。

    リアルで印象的な映像は、見る人の心を打つと同時に、自然保護や動物福祉に関するプロジェクトへの寄付を促す重要な手段のひとつとなっている。一方で、「いいね」や広告収入を集めたいAIスロップのアカウント運営者にとって、合成画像は都合のいい手段になりうる。ソーシャルメディアのフィードや検索エンジンの画面では、はるかに安いコストでつくれるフェイク画像が、本物の画像を駆逐しつつあるようだと、動物保護活動家としても著名な哲学者のオスカー・オルタは言う。オルタは先ごろ、AIが野生の生きものたちに及ぼす影響に関する短編映画の制作に携わった。

    オルタは、最近インターネット上で見かけるようになった、火災や洪水の現場で野生動物が救出される映像など、現実離れした動画への懸念を口にする。AI生成を疑われるコンテンツが増えることで、本物の救助活動までが不審の目で見られ、将来的にこうした活動の資金調達が難しくなることを危惧しているのだ。気候変動による異常現象が頻発するいま、好ましい状況とはいえまい。

    偽物のコンテンツに煽られて危険な行動に走り、その過程で動物を傷つけてしまう人もいるかもしれない。「ホッキョクグマが溺れているところに、ボートに乗った人々が現れて救助するディープフェイク動画が出回っています」とオルタは言う。彼はこうした映像を「馬鹿げている」と断じ、「動物の救助について、誤った情報を伝えるものです」と語る。

    AI生成であることを知らせる対策

    動物に関するAI生成の偽情報は次々につくられ、拡散されているが、研究者たちの間ではこの流れを止める方法を提案する動きが始まっている。2026年8月、ニューヨーク大学の精神・倫理・政策センター(The Center for Mind, Ethics, and Policy)の所長であるジェフ・セボは、AI開発企業に対し、動物に害を及ぼす恐れのある回答を生成しないよう警告する文言を、自社のAIモデルガイドラインに盛り込むよう促す取り組みを開始した。

    そこには、動物たちが苦痛を受ける可能性がある場合に、「確かな根拠や合理性に基づいて判断することの大切さを強調する一方で、過度に説教くさくなったり、道徳を振りかざしたり、ましてやユーザーの正当な要求をも拒んだり」することは避けたい、との思いがあるのだとセボは言う。

    カリフォルニア州と欧州連合(EU)は、最も広く使われているAI画像生成ツールに対し、AI 生成コンテンツであることを示す、目に見えないタグを画像に埋め込むことを義務づける法律を新たに制定した。すなわち、ソーシャルメディアの各プラットフォームは、こうしたタグを使ってAI生成の画像や動画であることを開示する義務を負うということだ。

    Share.

    Comments are closed.